2010年12月2日木曜日

【特別寄稿】 生物多様性と気候変動― [A SEED JAPAN 江口健介氏]

去る10月に名古屋で開催された生物多様性条約COP10。
生物多様性と気候変動は強くつながっています。

そこで、国際青年環境NGO A SEED JAPAN 理事で生物多様性の損失をゼロに!プロジェクト担当の江口健介さんに、生物多様性と気候変動の関連性とは何なのか?
COP10の経験からCOP16に生かせることは何なのか?
を分かりやすく解説していただきました。

0. すべてはリオから始まった――――

気候変動枠組条約第16回締約国会議(以下、UNFCCC-COP16)がメキシコ・カンクンで開幕されるその約1か月前、日本・名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(以下、CBD-COP10)は閉幕しました。気候変動枠組条約(以下、UNFCCC)と生物多様性条約(以下、CBD)は、成り立ちや同様に地球規模の環境問題を扱っていることから“双子の条約”と呼ばれたり、砂漠化防止条約(UNCCD)と3つ合わせて、1992の年リオサミットがきっかけだったことから、“リオ3条約”として位置づけられたりするなど、親和性の高い条約と言えます。
CBD-COP10に参加し、提言活動を行ってきたユースとして、気候変動と生物多様性の関わり合いやCBD-COP10における気候変動に関わる論点、UNFCCC-COP16に対する生物多様性の視点から見た期待などについて簡単に紹介したいと思います。
1. 密接に関係する生物多様性と気候変動――――

まず、生物多様性と気候変動の関わりですが、気候変動は生物多様性の損失の要因の一つであると明確に位置づけられ、大気中の二酸化炭素濃度と気候の変化により、多くの生態系と種に影響を及ぼしています。例えば、気温の変化による生息域の変化や海水温上昇によるサンゴ礁の破壊などが挙げられます。一方で、気候変動の緩和・適応策に生態系サービスが有効であり、その機能を増大する必要があるという側面も忘れてはいけません。このようにこの二つは密接に関わっており、両面で改善を促す動きが必要です。
CBD-COP10では、「生物多様性と気候変動」というテーマの作業部会があり、大きく3つの論点がありました。一つ目は、気候変動対策として行われている海洋施肥やCCSなどの地球工学(ジオ・エンジニアリング)が生物多様性への悪影響を及ぼす可能性に対し、どのように対応するか、です。二つ目に、冒頭にも紹介した“リオ3条約”の共同プログラムを2012年のEarth-Summitに向けて、どのように実施していくかということ。3つ目はREDD(=Reduced Emissions from Deforestation and forest Degradation)についてです。森林は気候変動にとっても生物多様性にとっても大変重要な要素ですので、どちらの側面でも有効な仕組みが必要です。

2. コペンハーゲンを繰り返すな――――
最後に、個人的にCBD-COP10からUNFCCC-COP16に向けたメッセージとしては、大きく二つあります。一つ目は、やはり気候変動による圧力を軽減することが喫緊の生物多様性の損失を抑える、という要素も意識してもらいたいということです。この二つの大きな環境問題を切り離すのではなく、両方に対し締約国には野心的に方針を定めてもらいたいと思います。

もう一つは、良い“雰囲気”を求めるということです。ご存知の通り、昨年コペンハーゲンで開催されたUNFCCC-COP15では、ポスト京都議定書の具体的な枠組みを見いだせなかったのが事実だと思います。その流れを受け、CBD-COP10では、NGOはもちろん、政府代表団の間でも「コペンハーゲンを繰り返してはいけない。」という雰囲気が何となくでも漂っていたように感じます。その結果、中身については要議論ですが、名古屋議定書や愛知目標は無事採択に至りました。条約の締約国として必ず成果を出す、というようなこの雰囲気を逆にUNFCCC-COP16に引き継いでいって欲しいと思います。

国際青年環境NGO A SEED JAPAN

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