2015年11月10日火曜日

COY11の魅力をお届けします!

こんにちは!CYJメディアチームの有村です。
いよいよCOP21の開催があと20日と迫ってきましたね!
そしてなんと、COY11の開催まであと16日なのです。実はもう2週間を切っています!!
ということで今日はCOYとは何か、どんなことが行われるのか、またCOYの魅力についてたっぷりとお伝えします。


COYとは?
COYとはConference of Youthの略であり、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)に合わせて開催される、世界中のユースが気候変動をテーマに集う国際イベントです。ネットワークづくり、情報交換やCOPでの活動計画を議論する、いわば「ユースの、ユースによる、ユースのための」会議です。
今年はCOP21の開催地であるフランス・パリで、COY11が11月26日から28日の3日間開催されます。この会議には約5000人もの若者が全世界から集まり、気候変動問題に関する議論を交わします。
COYは2005年以来、毎年COP直前に開催され、国連気候変動枠組条(UNFCCC)事務局公認のYOUNGOがアドバイザーを務めています。YOUNGOは世界中のユース団体(Youth NGO)のネットワークを指し、2009年以来、UNFCCC事務局からユース組織として正式なオブザーバーのステータスを与えられています。今年のCOY11は、フランス現地のユース団体であるAvenir Climatique, CliMates, French Scouting Federation, REFEDDが主体となって企画しています。
COYに参加する世界中のすべてのユースが、気候変動に関する様々なワークショップや専門家による講義、展示企画などに参加することができます。今年のCOP21では京都議定書に続く気候変動対策の新たな枠組みの採択が予定され、国際交渉において非常に重要な年です。


                          (COY10にて、アジアユースと野外でのミーティングの1コマ)


具体的にどんなイベントがあるの?
AYCN(Asian Youth Climate Change)との意見交換会

アジアユースとのミーティング、ワークショップの開催
    ■台湾、韓国とのワークショップ
===>COP10では、アジアにおける気候変動の影響と適応について他国のユースに知っもらうため、各国がそれぞれ災害の激化や気候変動の農業への影響について発表しました。

ワークショップに参加する。
    ■Skill Sharing Workshop
===>COY 10で開催されたSkill Sharing Workshop では、“私たちがどういった目的を持って、どういったターゲットに対して、どのような手法でアクションを起こすか”について過去の事例なども用いながら、意見の交換をしました。

他国ユースへインタビューを行う。
        COY10のときのインタビューの様子はこちら!
          ====> https://youtu.be/aqt8-SYw21I



COYでのとある1日
8:00   朝食

9:00   レセプションに出席

10:00  Training Sessionに参加
他国のYOUTH や、大学の教授のレクチャーを受け、今後のエネルギーと環境との共存について議論を行いました。

11:00  Skill Sharing Workshopに参加
私たちがどういった目的を持って、どういったターゲットに対して、どのような手法でアクションを起こすか”について過去の事例なども用いながら、意見の交換をしました。

12:00  昼食

1:00   Skill Sharing Workshopに引き続き参加

15:00  これからのワークショップにむけての話し合い

16:30  会場のサイドイベントを回る

このように3日間があっという間に過ぎていってしまいます。。



私もこのたびCYJのメディアチームの一員として、COP21/ COY11に参加させて頂きます!世界中のユースの声を日本に届け、日本を、そして日本のユースを活気づけたいと思います。
では、また。




[文責:有村]




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<参考文献>
■パリの環境国際会議に一石を投じよう!大学生が「地球の将来」をガチで議論する
 https://www.makuake.com/project/youthmodelcop/



2015年10月31日土曜日

COP21まで残り30日!いま話題のCOP21を知ろう!!


Happy Halloween!どうも、CYJメディアチームの稲田理人です。
今日は、ハロウィンということで、お菓子や仮装がとても楽しみですが、なんとCOP21開催まで残り30日でもあるんです!!

そこで、今回は、気候変動問題の節目として世界が大注目をしているCOP21についてざっくりとご紹介したいと思います。

【そもそもCOP21って何?】

COPとは、Conference of the Partiesの略で、締約国会議を意味し、国際条約の中で、物事を決定するための最高意思決定機関として設置されています。
今回パリで行われるCOP21は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づく、21回目の地球温暖化に対処するための締約国会議ということになります。


【なんで注目されているの?

発展途上国や先進国を含めたすべての国が参加する2020年以降の新たな温暖化対策の国際的な枠組みが決定されることが期待されるからです。

気候変動交渉の流れ
今までの交渉経緯を見てみると、

1992年に『危険な気候変動を防ぐこと』を究極的な目的とした気候変動枠組条約(UNFCCC)が作られ、国際的な気候変動対策が始まりました。
みなさんも一度は耳にしたことがあるだろう京都議定書では、温室効果ガス排出に上限を設けた初の国際条約となりました。しかし、京都議定書で定められた期間以降の国際条約としてポスト京都議定書を採択しようとしたCOP15では、先進国と発展途上国の対立により、合意を行うことが出来せんでした。この結果、京都議定書は期間を2020年まで延長したものの、日本を含む一部の国はこれに参加せず、自主的な温室効果ガス削減目標を設定するのみとなりました。
翌年、交渉の仕切り直しとして、法的拘束力のある国際的枠組みを2015年に合意することが決められ、長い時間を書けて準備が行われてきました。
そして、今年2015年パリでCOP21が行われるというわけです。

つまり、すべての国が参加する国際的な枠組みがようやく決められるのが今回パリで行われるCOP21となります。
COP21の重要性が少しは伝わったでしょうか?


【気温上昇で何が起きるの?】

気候変動問題でよく言われる地球温暖化ですが、気温が上昇すると私たちの身の回りで何が起こるのでしょうか?
最新の科学的知見をまとめた権威あるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書によると、地球温暖化は疑う余地がないと示され、これは、人為的な温室効果ガス排出によるものである可能性が極めて高いと結論付けられました。また、現在の削減目標に基づくと、今世紀末の気温上昇は3度前後、厳しい温暖化対策が行われたとしても2度未満の達成は難しいと言われています。


世界平均気温の変化に伴う影響の事例(気候変動2007:統合報告書より引用)

上の図は、世界平均気温の上昇に伴う影響の事例です。(文章の左端が影響の出始めるおおよその気温上昇のレベルを示していることに注意。)この図によると、1℃未満の気温上昇により、サンゴの白化現象が増加したり、沿岸域では、洪水及び暴風雨被害の増加が懸念されることがわかります。
洪水及び暴風雨の被害といえば、茨城県、栃木県、宮城県に大雨特別警報が出された平成27年9月関東・東北豪雨を思い出す方も多いと思います。

日々の気温変化の中では1℃未満の変化は些細なものに感じてしまうかもしれませんが、世界の平均気温が僅かでも上昇するということは、様々なリスクが増加してしまう、大変なことであることが分かっていただけたでしょうか。

【自分たちに出来ることは?~COY東京に参加してみよう】

平均気温が上昇すると自分たちの生活にも影響が出ることがわかりました。今すぐ行動を起こしたいけど、パリは遠いし、行けない・・・そんな人も中にはいるのではないでしょうか?そんなあなたに提案です!!COY東京に参加してみませんか?
COYとは、Conference of Youthの略で、毎年COPにあわせて開催されるユースのためのイベント。気候変動や持続可能な社会に関するワークショップや講演を行ったり、気候変動に関心の高いユースが集まる一大イベントです。
COY10の様子
今年は、パリで行われるCOYの他に、
Local COYとして、11月26日~28日に東京でも開かれます。日本、そして世界のユースと、私たちの未来を左右する気候変動問題について考え、行動してみませんか?
詳しくは、以下のURLからご覧ください。
http://tokyo.coy11.org/en/



気候変動問題の節目となる2015年・・・
この機会に、気候問題、世界の動向に目を向けてはいかがでしょうか?


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【参考文献】

国立環境研究所 環境問題基礎知識
https://www.nies.go.jp/kanko/news/21/21-1/21-1-05.html

環境省 過去の気候変動枠組条約締約国会議(COP)の開催状況と結果について
http://www.env.go.jp/earth/cop/

気候変動の、今を伝えるIPCC report communicator
https://funtoshare.env.go.jp/ipcc-report/

気候変動2007:統合報告書
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/syr_spm.pdf

気象庁 平成 27年 9 月関東・東北豪雨について
http://www.jma.go.jp/jma/press/1509/18f/20150918_gouumeimei_sanko.pdf

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2015年6月17日水曜日

「せっかくだし、パブコメしてみようかな」


 こんにちは! COP21 Advocacyチームの藤田と申します。私たち Advocacyチームでは、国内および国際的な気候変動政策について、政策意思決定者に向けたユースとしての意見発信を行うことを目的に活動しています。と、立派なことを述べつつも、実を言えば私自身は最近まで、「そもそもAdvocacyってどういう意味?」という程度の知識レベルでした(すみません)。まだチームとしての動きは始まったばかりですが、これから楽しみながらメンバーと共に色々と勉強していけたらと考えております。


INDCって何だ?? バブコメって何だ??

 さて、つい先日の3日(水)に、環境省より、2020年以降の温室効果ガス削減目標を含む日本のINDC(政府原案)に対する意見の募集(パブリックコメント;通称パブコメ)が始まりました(http://www.env.go.jp/press/101079.html)。現在、世界各国はCOP21(国連気候変動パリ会議)での世界全体による温室効果ガスの大幅削減へ向けた国際合意という大きな目標に先立ち、国連に対して、各国がそれぞれ決めた温室効果ガス削減の約束草案(Intended Nationally Determined Contributions; 通称INDC)の事前提出が求められています。現在では、米国、EUを始め、38の国・地域が既に提出を済ませている状況です(http://www.can-japan.org/activities/1761)。日本は他の国に遅れをとりつつも、今回の政府原案からパブコメを経て、一気に7月下旬までにはINDC提出へ向かおうとしています。つまり、今は国内でも最も関心が集まりつつある時期です。そこで今回の投稿では、これまでの記事よりも少しハードルを下げて、「そもそもINDCって何だろう? パブコメって何だろう?」という方にでも、興味を持って読んでもらえるような内容にしたいと思います。


・そもそもなぜINDCが必要なのか?

 そもそも、なぜ各国はINDCというものを先に提出しなくてはならないのでしょうか? それは、端的に言えばCOP21おいて、世界全体が関わる温室効果ガス削減に向けた新たな枠組み作りを成功させるためです。近年、地球全体において明らかな気温の上昇が観測されており、2013年に発表されたIPCC AR51作業部会では、「気候システムの温暖化に疑う余地はない」という記述がされています。まず「疑うこと」を大切にする科学者集団が、これほど強いメッセージを残したということは、現在の気候変動問題についての喫緊さを表わしており、私たちはこの事実を重く受け止める必要があると考えられます。その近年における温暖化に最も寄与している温室効果ガスを世界全体で一刻も早く削減していくために、今回のCOP21で京都議定書の第二約束期間が終わる2020年以降における世界全体による新たな枠組みを作ろう!という流れなのです。INDCがあることで、各国はCOP21に先立って自国の目標を他国に明示することになります。それにより、ある種の不透明感を回避することができ、その後の交渉準備を容易化し、共通目標の設定をよりスムーズにすることにつながるのです。例えば、既にINDCの提出を済ませた米国、EUはそれぞれ、「2025年までに05年比−26%〜−28%減」、「2030年までに90年比−40%減」という削減目標を示しています。また、つい先日の78日にドイツのエルマウで開催されていた主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、世界全体により2010年比で2050年までに最大70%の排出削減を目指すことを宣言しており、いま確実に、世界中でCOP21の成功へ向けた機運が高まっています。


・日本のINDCの中身とは?

 一方、現在出されている日本のINDCにはどのような目標値が記載されているでしょうか? その中身を少しだけ見てみましょう(http://www.env.go.jp/press/files/jp/27284.pdf)。これによると、日本の目標値は、「2030年度に2013年度比で−26.0%(2005年度比で−25.4%)」であることが分かります。皆さまは、この数値を見てどのような感想を抱くでしょうか? 「−26.0%」という数値をそのまま見れば、EUの出した目標値には及ばないものの、米国の出した目標値とほとんど変わらないし、こんなものかなとも思う人もいるかと思います。ただ一方で、目標値を示す際の基準年が異なっているのも気になります。実はこれが少々くせ者なのです。
  実際のところ、現在ドイツのボンで行われている国連気候変動交渉会議(COP21前の準備会合のようなもの)において、日本の掲げた目標は国際社会、特に国際NGO団体などからは、厳しい評価を受けているようです(http://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2015/06/Kiko_SB42_No1.pdf)。その理由は、そもそもの目標値の低さ、そしてその計算方法です。どういうことかと言いますと、日本の「2030年度に2013年度比で−26.0%(2005年度比で−25.4%)」という目標は、実は1990年比にするとたったの18%減(EUでは−40%削減)であり、これは「基準年をズラして目標を高く見せようしているだけで、実は他の国々が90年以来取り組んできた努力を無視しようとする動きではないか!?」、と一部では捉えられているのです(表1および2015510CYJブログ記事参照)。

表1:主要国のINDCの比較(米国は2005年比の数字を、EU1990年比の数字を削減目標として提出) 出典:環境省HP 2020年以降の地球温暖化対策検討小委員会 約束草案関連資料(平成27430日分)』 


 ただ日本は、2011年に発生した福島第一原発事故に伴い、今現在は原子力発電所による発電を止めております。さらに、再生可能エネルギーの技術発展が未だ追いついていない現在において、早期からの再生可能エネルギー導入は電力コストの増加に繋がる面もあります。そのため、確かにCO2排出の問題はあるけれども、国内からの視点のみで考えれば、安価で安定供給も可能な石炭火力発電を維持・拡大することは決して悪くはない、よって削減目標もこの程度で十分ではないか?、という考え方も、その視点からすれば、それは一つの「正しい」意見なのかもしれません。その一方で、やはり気候変動という問題は、長期的に見た場合のリスクが非常に大きいために、世界全体による対策を後回しにすればするほど、いずれ各人が払わざるを得ないコストというのは今後さらに大きくなる可能性が高いと言えます。やはり人類が同じ地球でこれからも生きていく以上は、個人の視点、自国の視点のみならず、世界全体としての視点が、短期的視点のみならず、長期的視点が必然的に求められていきます。このように、どのような視点で問題を見ていくのかというのは、一人一人がこれから気候変動問題と向き合い、国内の動きについても意見形成していくために、とても重要な考え方であると思います。


・改めてパブコメって何だ??

 前置きが大変長くなりましたが、ここで今回の本題であるパブリックコメント(パブコメ)について少し詳しく見てみましょう。パブコメとは、政府が政策を実施していく上で定める様々な政令・省令について、これらの決定が政府内でなされる前に、あらかじめその案を公表し、広く国民からの意見・情報を募集する手続きのことです。システムとしては、国民から出た一つ一つの意見に対して、各担当省庁がそれを読み、見解を述べ、それがHP上にきちんと公表されるようになっております。
 例えば、最近、「食品、添加物等の規格基準の一部改正に関する意見の募集」というパブコメがありました(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140561&Mode=2)。 この募集には、計7件の意見が集まっていました(リンク先の「別添」参照)。集まった意見らは、普段の生活に基づいたものから、専門的な見解まで、様々な角度からの意見があり、多くが率直に普段感じていることをパブコメという形で表明されている印象でした。意見者の個人情報も、もちろんしっかり守られており、HP上では匿名の形で意見の概要、理由のみが公表されているようです。今回、私ははじめて様々な実際のパブコメを閲覧したのですが、そもそもこれだけ多くの案件が公募にかけられていたのか!、ということに率直に驚きました。また、国民からの各意見に対する回答にも、各担当省庁がしっかりと丁寧に対応されている印象を持ちました。各意見の内容や文量もそれぞれが様々であり(中には、ほんの一言で賛成意見を表明するようなパターンもありました)、思っていたよりも敷居は高くないようです。これまで「パブコメ」という名前自体は知っていたものの、「政府に直接モノ申す!」とでもいうような、ハードルの高いネガティブな印象がどこかにあった私にとっては、今回の気付きはとても収穫だったと思います。


・さて、せっかくだしパブコメってみようかな?

 CYJとしましては、この機会に2020年以降の温室効果ガス削減目標を含む日本のINDCに対して、せっかくなのでパブコメを提出してみようと考えています。

 2020年以降の社会とは、私たち今の若者が中心となっていく社会です。今の科学をもっても予測し切れない不確実なリスクをはらんだ気候変動と、今後とも長く付き合わざるを得ない私たち今の若者は、ある種の「覚悟」と「責任」をどこかで決めなければなりません。そして、それがまさに今なのだと私は思います!これから社会全体として気候変動と適切に付き合いつつ、私たち一般市民が安全・安心して暮らしていくためには、専門家と双方向の対話のもとで、私たち市民が自ら主体となって政策形成の過程に参画することが、現実問題として求められているのです。
 そこで今回読者の皆様も、ぜひこの機会を利用して一緒にパブコメってみませんか? 提出方法は、指定された様式を用いて、郵送、ファックスによるやり方や、電子メールによる方法もあるようです(http://www.env.go.jp/press/101079.html)。普段、個人的にぼやっと考えていたり、感じていたりしていた日本の気候変動政策に対して自分の思う部分を、政府が読み、それに対してきちんと見解を示してくれて、場合によってはその後の政策の動きにも影響を与えるかもしれないという、これはまたとない機会だと思いますよ!
 また、読者の皆様の中には、ちょっと興味はあるけれども、自分でパブコメをするまではちょっと気が引ける、という方もいらっしゃるかと思います。そういった方は、是非ともこちらのCYJパブコメ(本ブログ記事のコメント欄(笑))にでも、どうか気軽に意見してみて下さい! 私たちCYJが皆様からの意見を拝見させて頂き、一つ一つ私たちなりの回答をさせて貰い、可能であればそれらの意見をまとめた上で、皆様の代わりとなってパブコメとして提出させて頂くことも検討しております(^^)
 
 CYJとしてのパブコメが完成しましたら、その際はまた本ブログでお知らせします!
 皆さま、どうぞこの機会に私たち若者・市民の意見を、パブコメとして日本政府に届けてみてはいかがでしょうか? 



文責:藤田 



参考文献

環境省HP 報道発表資料 『「日本の約束草案(政府原案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)』http://www.env.go.jp/press/101079.html
環境省HP 2020年以降の地球温暖化対策検討小委員会 約束草案関連資料(平成27430日分)』 
在日フランス大使館HP 『気候交渉の新しい手段「気候変動対策への国の貢献」』
Climate Action Netwark Japan HP  『2020年以降の温暖化対策の国別目標案(約束草案)の提出状況・一覧』
国立環境研究所HP 『INDC(各国が自主的に決定する約束草案)とは?:温室効果ガス削減目標の設定に関する教訓を活かす』
・気候ネットワークニュースレター Kiko ADP2-6通信 ボン No.1
・電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ] 『パブリックコメント制度(意見公募手続制度)について』

2015年5月25日月曜日

政府の提出したエネルギーミックス案に基づいた電気料金の変化


アメリカの海洋大気局(NOAA)は5月6日、世界40箇所の観測結果に基づき世界の大気中のCO濃度今年の3月に観測史上初めて400ppmを越えた400.83ppmであったことを発表しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は地球温暖化の被害を回避するために抑えるべきCO濃度が450ppmと発表しています。IPCCの発表した数値と比較すると、現在のCO濃度は、大変危険な領域の数値に達していることは明らかです。
もはや一刻の猶予も残されていない中、今年の年末にパリで開かれるCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で取り扱われる、温室効果ガス排出削減目標を盛り込んだINDC(Intended Nationally Determined Contributions: 各国が自主的に決定する約束草案)は、今後の気候変動の世界的な取り組みの要となることで注目が集まっています。
前回の投稿でも取り上げたとおり、日本政府は先月30日に日本のINDC案を発表しました。そして、そのINDCに盛り込まれた目標、「2030年度に2013年度比マイナス26.0%(2005年度比25.4%)の水準にする」を達成するための施策として政府は長期エネルギー需給見通し骨子(案)も先月28日に発表しています。
その目標年である2030年におけるエネルギーミックス案は、図1のようになっています。震災前10年間平均と比べて、2030年度の電源構成で、再生可能エネルギー(再エネ)の増加、原子力と石油による発電の減少を見込んでいることがわかります。
C:\Users\hhagiwara\Documents\CYJ articles\日本政府エネルギーミックス 電力構成.jpg
図1 2030年度の電源構成・発電電力量案
出典:資源エネルギー庁 長期エネルギー需給見通し骨子(案)関連資料 
では、政府はどのような点を考慮してこの案にまとめたのでしょうか?
エネルギーミックスを策定するにあたっての基本方針に「3E+S」というものがあります。これは、2014年4月に発表されたエネルギー基本計画の中に含まれているものであり、3つのE「安定供給/ Energy Security」、「経済効率性/ Economic Efficiency」、「環境適合/ Environment」、1つのS「安全性/ Safety」の4つを基本的な視点として、エネルギーを考えるという政府の姿勢を表した言葉です。
3E+Sを基本的な視点として、原発の安全性の確保を第一考慮としたうえで、政府は3つの目標を上げています。
  • エネルギー自給率を概ね25%にする
  • 電力コストを現状より上げずに、抑制していく
  • 環境適合に関して、世界をリードする
今回この記事では、普段の私たちの生活との関係が深い電力コストに関して、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
電力コストは、家庭用と産業用の電気を生産するためのコストのことを指しますが、日本の電力コストは、2011年の東日本大震災の後、化石燃料への依存が高まった影響により、高騰しています。また、その影響により、電気料金も高騰しています。
下図に示されているように、震災前の価格と比べると、2013年の電気料金は、家庭用で約2割、産業用で約3割上昇していることがわかります。この高騰は、産業、特に中小・零細企業に、多大なる影響を与えていると同時に、私たちの生活にも影響を与えています。
図2 平成22年度~25年度間の電灯料(家庭用と産業用)の変化
出典:資源エネルギー庁 エネルギーミックス検討状況について
また、電気料金に関わる国民負担もやむなく増加させ、電力の料金を値上げしているにも係らず、国の電力会社10社合計の経常損益では、赤字が続いているのが現状です。


このような現状で政府は電力コストを抑制するという目標を掲げています。では、具体的にどのような対策を考えているのでしょうか?
ここで、先ほど説明した3E+Sの観点が重要になってきます。
日本の、省エネルギー(省エネ)と再エネの拡大によって原子力発電(原発)への依存を低減させる(安全性)方針を軸として、CO2の排出を抑制し(環境適合)、エネルギーの自給率を上げる(安定供給)という観点から見たうえで政府は、日本がとるべき対策は次の3点と考えています。
  • 可能な限りの原子力の低減
  • 再生可能エネルギーの拡大(最大限の導入)
  • 石炭の使用抑制、また、LNG(液化天然ガス)の活用
CO2/kWh(一キロワットで一時間使用したときに排出する二酸化炭素量)の値で比較すると、石炭は約0.82 kgのCO2を排出するのに対し、LNGは約0.40kgのCO2を排出するため、石炭を抑制しLNGを活用することはCO2の排出抑制に効果的です。
しかし、もうひとつのE、経済効率性、の観点から日本の基本方針を考えてみると次の3点が対策として見えると考えられています。
  • 可能な限りの原子力の低減
  • 再エネの抑制(最大限の導入)
  • 石炭の活用、LNGの抑制
新しいエネルギー源として期待されている再エネですが、その推進にもコストがかかり、更なる急激な拡大は、結果的に更なる国民の負担の増大につながる可能性があります。そのため、経済効率性の観点から見ると、最大限の導入をしつつも抑制が望ましいとされています。
また、円/Kwhという(一キロワット一時間使う私用した際にかかる料金)の値で比較すると、石炭は約3.9円/Kwhであるのに対し、LNGは約8.2円/Kwhかかります。そのため、国民・産業への負担を考えた際、石炭の活用とLNGの抑制が望ましいことになります。


つまり、日本政府は、3E+Sという観点から、省エネと再エネの拡大による原発への依存の低減という方針を達成するためには、上で述べた、安全性・環境適合・安定供給の観点から導き出される目標と、安全性・経済効率性の観点から導き出される目標の両方をうまくバランスさせる必要があるのです。
こういったバランスを考えて出された案が今回政府の提出したエネルギーミックス案なのです。政府の方針通りに物事が進めば、将来の日本の電気料金の国民負担は減少する ということです。
私は、経済の活性化のために、政府が電気料金の産業負担を減らすことには賛成です。しかし、国民負担に関しては、エネルギーは環境に負担をかけて生み出されるものなので、再エネの導入によって電気料金の国民負担が高くなることは、環境への負荷を料金に取り入れていたものであり、コストすべてを考えた電気料金の本来あるべき姿であると思います。また、電気料金が高くなることによって、国民の節電への意識も高まる可能性があると考えています。そのため、個人的には、今回政府のエネルギーミックス案において、国民負担を減少させるためという理由のために再生エネルギーの導入を抑えることには反対です。
エネルギーは私たちの生活に必要な不可欠なものです。今回政府の出したエネルギーミックス案は、日本の将来・私たちの未来に密接に関係しています。皆さんは、この案、また、政府の方針についてどう考えますか?この機会にぜひ、エネルギー、また、国の未来について考えてみてください。


(文責:萩原)


~参考資料~
日本経済新聞電子版『世界のCO2濃度が危険水域に 測定開始後初 -米海洋大気局』(2015年5月7日付)
経済産業省資源エネルギー庁 『エネルギーミックス検討状況について』(2015年3月24日付)
経済産業省資源エネルギー庁 『長期エネルギー需給見通し骨子(案)関連資料』(2015年4月28日) 
経済産業省資源エネルギー庁 『長期エネルギー需給見通し骨子(案)』(2015年4月28日)
経済産業省 『日本のエネルギー2014:政府の視座』
経済産業省資源エネルギー庁 『考えよう、エネルギーのこと。日本のエネルギー2014』(2014年11月発行)