2015年3月31日火曜日

日本のINDC提出へ高まる期待



今年の11月、世界の環境問題の運命を大きく左右する、大規模な会議COP21がフランス・パリで開催される。世界各国がここで採択予定の「パリ合意」に向けて、次々と動き始めている。




図:2100年頃の気温変化の予測シミュレーション

1986-2005年の気温に対する、2081年-2100年の気温変化の予測を示している。(左)有効な対策をとることができた場合。(右)有効な対策をとることができなかった場合。(出典: 環境省)

◇COP21に向けて

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書によると、気候システムに対する人間の影響は明瞭であり、2100年までに産業革命前に比べ気温が2℃以上上昇することが予測されている(上図参照)。年々、温暖化の科学的な支持が高まると同時に関連する被害が増加ており、5年前のCOPで国際的に合意した気温上昇を2℃以内に抑える目標に向け、世界の機運が高まっている。


 COP21に先立って各国はINDC(約束草案)をUNFCCC(気候変動枠組条約)に提出をすることになっているが、3月30日時点で提出をしている国と地域はスイス、EU、ノルウェー、メキシコのみである。INDCとは、簡潔に言えば気候変動に対して自国ではどのような目標を設定し、どのようにその目標を達成していくかを示すものである。具体的に、気候変動問題に意欲的な姿勢を見せているスイスとEUメキシコのINDCは以下のような内容が提示されている。

・スイス温室効果ガスを2030年までに1990年比で50%削減、2050年までに1990年比70~85%削減する事を盛り込んだ
・EU2030年までに1990年比で40%削減、2050年までに1990年比80~95%削減を表明
・メキシコ排出削減目標に加え,人権問題やジェンダーに関しても触れている


各国ともに、公平かつ野心的であり透明性があるものに仕上がっている。この4つの国と地域では気候変動問題に対しての意欲を非常に感じ、現段階で世界を牽引する先導的な立場となっているのが現状である。



◇日本に求めれていること

 そんな中、日本には何が求められているのであろうか。
 日本では、2050年までに1990年比80%削減という目標が既に閣議決定されている。これを達成する為に、中・長期的な目標と計画をはっきりと提示し、段階的な目標達成に向けた具体的なロードマップを描いていく事の必要性を感じる。また、国際社会での先進国の役割を考慮すれば、6月にドイツで開催されるG7サミットまでに野心的な約束草案の提出が求められる。早期の提出が、今後の国際社会に対する役割、信頼関係の構築に繋がる。逆に言うと、
このタイミングを逃すと完全に気候変動分野で世界をリードする事は絶望的な状況に追い込まれる。

 
日本がパリ合意で明確な目標提言を出来なければ、気候変動問題において国際社会の先頭に立つ事は難しい。はたしてこのままでいいのだろうか。今、日本が野心的かつ平等で透明性のあるINDCを早期提出ずることへの期待が国内外で拡がっている。

 ツバルでは、先のサイクロン・パムの影響でいくつかの島が消失している
。もう、気候変動問題は後回しでいいという考え方は古いように感じる。現在、私達の世代は有史以来最大の岐路に立たされているのではないだろうか。今の私達の決断が将来世代の気候変動問題の運命を決めるといっても過言ではない。その舵を切る大きな決断が一歩一歩着実に差し迫っているのだ。


(文責: 松日楽)


[1]「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 5 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要(速報版)」 環境省
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_syr_outline.pdf
[2]"INDCs as communicated by Parties". UNFCCC INDC Portal. 
http://www4.unfccc.int/submissions/indc/Submission%20Pages/submissions.aspx
[3]Climate Action Network Japan (CAN-Japan)
http://www.can-japan.org/
[4]特定非営利活動法人ツバルオーバービュー
http://www.tuvalu-overview.tv/blog/news/3253/ 

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