こんにちは!CYJの内藤です。
先日、CYJの内藤・塩原でOECC(一般社団法人海外環境協力センター)に訪問をしました。
今回の訪問目的は、気候変動対策の国際交渉で日本がリーダーシップを取っている、
二国間クレジット制度(The Joint Crediting Mechanism)の課題と今後の展望について、
現地でプロジェクトを展開する方々よりお話を聞くことでした。
【JCM制度が必要とされる背景】
現行のCDM(クリーン開発メカニズム)の問題点として、国連の中央集権的な統一管理による審査の長期化が挙げられれます。クレジット化により、準備から登録まで2年以上が必要とされ、その間に刻々と動く世界の政治や経済、プロジェクト実施地の状況変化の対応に追いつくことは非常に困難となっています。また、案件実施国の国別シェアの偏りや高効率石炭火力(超々臨界圧など)が石炭利用50%超の国に限定され、CO2の地中貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)などが対象外など、プロジェクトの偏りも指摘されていました。
【JCMとは?】
日本国では、二国間の契約において海外の相手国に対し、温室効果ガス削減技術・製品・システム・サービス・インフラ等の普及や対策を導入し、排出削減を行った場合、その排出削減量を評価、目標充当を可能とする二国間オフセット・クレジット制度(BOCM:The Bilateral Offset Credit Mechanism)の検討やパイロットプロジェクト事業の推進が行われていました。また、方法論については、簡便性と利活用の視点から、チェックリストによる制度適格性判断やフローチャートによるプロジェクトの最適な算定方法が決定づけられるなどの検討が進められています。
【日本国の動き】
日本国では気候変動問題や、問題解決に係わる経済発展や各国間の摩擦解消に向けて、地球温暖化問題に関する閣僚委員会を設け、次のような提言を発表してます。
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『途上国との連携:低炭素技術の普及・促進,新たな市場メカニズムの構築気候変動問題を解決するためには、先進国の低炭素技術・製品を速やかに普及させる仕組みを官民一体で構築し、今後、経済発展に伴い温室効果ガスの排出増が見込まれる途上国において、排出削減と経済成長を両立させる低炭素成長を実現することが重要である。この一環として、我が国としては、これまで重要な役割を果たしてきた京都議定書におけるクリーン開発メカニズム(CDM)のさらなる改善を目指すほか、新たな市場メカニズムの具体化に向け、二国間協力(二国間オフセット・クレジット制度)や地域協力をさらに推進していく。
我が国は、二国間オフセット・クレジット制度の設計と実施に向けた知見・経験の共有のためにこれまで28 か国との間で実現可能性調査を進めている。また、一部のアジア諸国との間で同制度に関する政府間協議を開始した。同制度の2013 年からの運用 開始を目指し、今後これらの相手国との間でモデル事業の実施、キャパシティ・ビルディング及び共同研究を推進すると共に、他の関心のある諸国との間でも政府間協議を進める。これらの取組を通じ、途上国との幅広い協力関係の構築を目指すとともに、積極的に情報発信を行っていく。』(平成23年11月29日地球温暖化問題に関する閣僚委員会 了承)
二国間オフセット・クレジット制度は、日本国の制作の重要な柱として、官民一体で進められている取り組みとなる。
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『途上国との連携:低炭素技術の普及・促進,新たな市場メカニズムの構築気候変動問題を解決するためには、先進国の低炭素技術・製品を速やかに普及させる仕組みを官民一体で構築し、今後、経済発展に伴い温室効果ガスの排出増が見込まれる途上国において、排出削減と経済成長を両立させる低炭素成長を実現することが重要である。この一環として、我が国としては、これまで重要な役割を果たしてきた京都議定書におけるクリーン開発メカニズム(CDM)のさらなる改善を目指すほか、新たな市場メカニズムの具体化に向け、二国間協力(二国間オフセット・クレジット制度)や地域協力をさらに推進していく。
我が国は、二国間オフセット・クレジット制度の設計と実施に向けた知見・経験の共有のためにこれまで28 か国との間で実現可能性調査を進めている。また、一部のアジア諸国との間で同制度に関する政府間協議を開始した。同制度の2013 年からの運用 開始を目指し、今後これらの相手国との間でモデル事業の実施、キャパシティ・ビルディング及び共同研究を推進すると共に、他の関心のある諸国との間でも政府間協議を進める。これらの取組を通じ、途上国との幅広い協力関係の構築を目指すとともに、積極的に情報発信を行っていく。』(平成23年11月29日地球温暖化問題に関する閣僚委員会 了承)
二国間オフセット・クレジット制度は、日本国の制作の重要な柱として、官民一体で進められている取り組みとなる。
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『―――JCMプロジェクト現場からの意見・OECC訪問・調査内容―――』
ここから訪問レポートですが、
現場の職員が考えるJCMの課題・展望について、以下にまとめてみます。
現場の職員が考えるJCMの課題・展望について、以下にまとめてみます。
▪️1. JCMの最新動向
日本政府の補助金だけでなく、アジア開発銀行からも補助が出るようになったことが、最新の動向とのことです。もともとは環境省・経済産業省予算で運営されてきた制度なので、新しい一歩と言えそうです。
▪️2. JCMが抱える課題
JCMが抱える課題は多数ありますが、
大きく「制度の課題」「交渉スタンスとしての課題」の2つに分けて考えることができます。
大きく「制度の課題」「交渉スタンスとしての課題」の2つに分けて考えることができます。
【制度の課題】
・プロジェクト条件による制約
JCMにはスキームの条件があり、それに合致しないとホスト国からの補助が出ません。
つまり、選考で一定の条件をクリアしないと補助がでないということです。
・相手国の意思による問題
日本側は技術を導入するが、やるのは現地。現地で予算を付けてもらわなければいけません。モンゴルの場合、発電関係は国営なので、モンゴル政府が意思決定をします。
いくら綺麗な絵を持って行っても、向こうがやらないと決めたら絵に描いた餅になるということです。
・現地の人がやりたいこと、ニーズに対応できる技術を日本が持っていない
・メンテナンスの問題
仮に日本の高い技術を導入できたとしても、「販売の販路」、「取り扱いの代理店の有無」、「設備管理ができる人材」等、現地でメンテナンスができる体制がなければうまく稼動はできません。また、日本と全く違う環境に技術を導入した時、土地柄的(現地の気候等)に耐えられない技術もまた存在します。
・技術流出、ライセンスの問題
企業としてお金を出して作り出した技術を、外に出したくないという思いもまたあります。
・相手国のMRV実施能力不足、MRV実施から発生するコストの問題
CO2の測定報告は途上国にとっては相当の負担となります。ここが原因でFSができないサイトが増えているとのことでした。工場でのプロジェクトをやるとしたら、そこの工場の管理が必要になります。
CO2メーターが壊れていた、または国際標準の規格外であると、
その時点でプロジェクトは進めることが出来きません。
つまり、どこまで完璧に実施し、どこまで妥協できるか?が重要になってくるということです。しかしながら、結局は国連に報告しなければならないのですが…(MRV形式)
その時点でプロジェクトは進めることが出来きません。
つまり、どこまで完璧に実施し、どこまで妥協できるか?が重要になってくるということです。しかしながら、結局は国連に報告しなければならないのですが…(MRV形式)
<ここまでのまとめ・ポイント>
本当はざっくりやった方がプロジェクトは進むし、削減も効果的にできるはずです。
しかし、今までやってなかったことをやらせることが、JCMのハードルとなっているとうことです。。
細かくやればやるほど、コストもかかるし進まないが、やらなければやらないだけ、不公平になるということです。(測定したCO2の価値が違ってくる。ちゃんとやったところが損をする構図のため。)
細かくやればやるほど、コストもかかるし進まないが、やらなければやらないだけ、不公平になるということです。(測定したCO2の価値が違ってくる。ちゃんとやったところが損をする構図のため。)
★質問1:それでは、ホスト国にとって技術移転以外のJCMへのインセンティブは何かあるのでしょうか?
温暖化対策に貢献しているとは言えるが、目に見えてメリットは感じられづらいのが現状とのことです。今はボランティア精神頼みとなっています。
★質問2:環境省PJによる補助金の支給期間が限られているのかで、今後の動向についてどう考えれば良いか。
クレジット化に進むとは思うが、それ自体が壁になってしまう。
(CDMが失敗した原因の1つであり、訴訟も発生している。)
必ずしもクレジット化だけを考えない方が良い?
技術移転のための補助金制度の方がいいかもしれない。
技術移転のための補助金制度の方がいいかもしれない。
⇒クレジット化するものはクレジット化、それ以外は緩くして補助金で賄うのも手。
また、日本の人(事業者、国民全体)にとっても、ある程度メリットがないと続きません。(技術・資金等が)全部日本から出てあげるだけの制度では、ただ苦しいだけで続かないということです。また、政権交代等の外的要因で結局途中で終了してしまうリスクもあります。
全ての人がメリットを受けるのは難しいですが、ある程度お互いがメリットを感じることが出来る制度になっていく必要があります。一過性のものにしないということが重要です。
【交渉スタンスとしての課題】
COP20での国際交渉を終えて、「立場の違い」、「受けるメリットの違い」が見えてきました。
・立場の違い
途上国に関して本当はJCMをやりたいけど、マルチ(多国間交渉)の場ではJCMに対する支持を公言できないこともあるとのことです。バイ(2国間交渉)になると日本に対して「さっきはごめんね。本当はJCMをやりたかったんだ。」という状況になることもあります。特にインド・中国になると、途上国を代表する国になり、CBDR原則に基づき、そもそも削減しないというスタンスをとるため、「JCMはやりません」という結論になってしまいます。一方インドネシアやベトナム等になると一歩下がった交渉スタンスにいるのでJCMの交渉ができるのです。
・受けるメリットの違い
中国くらいになると削減するための積立予算がたくさんあるから問題ありませんが、モンゴルくらいになると、対策予算が少ないため、はっきりともらえる立場につくことがあります。EUはEU-ETSを守りたいので脅威を感じているが、アメリカは放置し、自国内の状況を見るのに終始しています。アメリカはCDMの前段階であるAIJを既に持っており、むしろJCMはAIJの真似だと思っており、また最近はシェールガスがあるから、交渉やりやすいポジションにいます。日本は原子力事故でいつもダメだしを受ける立場にあることは受け入れるしかありません。
▪️3. COP21に期待していること
約束草案の中にJCMは入るはずである。
=INDCを議論するFVA内のBOCMの中にあるため。
<ポイント>
日本の人にとって不利にならないように。
ギガトンギャップは事実だが、大幅に譲歩せず、実現可能なものをしないといけない。
仮にしても政権がかわったら、また進まなくなる。それではいけない。
以上、JCMの課題・展望について勉強することが出来ました。
自分も、カーボンオフセットを企業に営業をしたことがあり、
企業や現地への負担の課題については、思わずうなずいてしまいました。
JCMは外見上はすごく良い制度なのですが、まだまだ解決しなければならない課題が、山のようにあるようです。しかし、JCMは日本がインセンティブをもって打った野心的な政策であると、自分は考えています。気候変動や環境問題に対して、攻めの一手を打つために、この制度をより改善していく必要がありますね!
これからも、JCMの動向を見守っていきましょう!
最後に、今回訪問を受け入れて下さった、
OECC担当者様に厚くお礼申し上げます。
誠にありがとうございました。
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