1.これまでの会議について
COPとは、Conference of the party(締約国会議)の略称で、1年に1回190国余りの国々が集まってUNFCCC(国連気候変動枠組条約)について話し合う場である。COP3で採択
、COP11で発効した京都議定書(KP)は、日本を含めた一部の先進国のみが温室効果ガス(GHG)の削減義務を負うものであり、削減の第一約束期間(CP1)が2012年で終了することから、KPの特別作業部会(AWG-KP)と同時に次期枠組みについての交渉も始まった。その後、COP13で決定されたバリ行動計画(BAP)に基づき、条約下に長期的な協力行動のための特別作業部会(AWG-LCA)が立ち上がった。BAPにより次期枠組みの設立の期限とされたCOP15では、オバマ大統領や鳩山総理などの各国の首相が一堂に会する歴史的な舞台が設けられた。しかし、次期枠組みはおろかDecisionさえ作ることができずに合意文書に留意(take note)するのみという結果に終わり、多くの国に深いトラウマを残した。
昨年のCOP16では、COP15で留意したものに肉付けした形で、Cancun AgreementというDecisionを作ることができた。AWG-KPに関しては玉虫色の決定であり、AWG-LCAに関しては雑多な内容をつなぎ合わせただけのものであったが、COP15の悲劇を乗り越えて、約130カ国の2020年の自主的削減目標などを正式な文書に盛り込むことができ、国連プロセスへの信頼を回復する大きな成果を残した。
2.今回の会議について
COP17の焦点は大きく2つある。
1点目は、KPの第二約束期間(CP2)についてである。日・加・露はCP2の削減義務を負わないと主張しているため、CP2自体が設定されず、削減義務が無い空白期間が生まれてしまう恐れがある。EUはCP2を推進する立場ではあるが、COP17を前に予断を許さない状況となっている。
2点目は、次期枠組みの設立についてである。遅々とした温暖化対策を加速させるためには、全締約国が参加する平等で実効的な枠組みが必要とされる。さらに次期枠組みの設立により、日・加・露などが不満を持っているKPの代替をすることも可能である。しかし、今すぐ次期枠組みを発効させることは実質不可能であり、採択や発効の次期などに言及したロードマップの設立に注目が集まっている。
3.INDABA会合について
COP17では、今までの会議と並行してINDABA(南ア先住民のズールー語で「自由な意見交換の場」)というCOP議長である南アのマシャバネ外相による対話の場が開かれていた。ここでは、何かのトピックに焦点を当てて議論をするのではなく、Big Picture(交渉の全体像)のために一部の先進国と途上国で自由に議論することが許されている。
7日からは閣僚級のINDABAも始まり、交渉官級で決まらない議題を連夜政治的に詰めていき、特に高い注目を浴びていた。実際、AWG-LCAの成果文書は130ページ超のものから進展がなく、AWG-KPの成果文書は一向に更新されないという状況が続き、会期後半はこのINDABAの成果文書のみが更新されていた。
4.会議で決まったこと
COP17は交渉が難航し、会期が1日半も延長する最も長い会合となった。再開会合に至ったCOP6、何も決まらなかったCOP15が脳裏を掠めたが、CP2の開始と次期枠組みのプロセスはパッケージ化されることで歴史的な合意に至った。
しかし、課題が無いわけではない。
CP2に関しては、期間(5年か8年)と各国の削減目標(2012年5月1日までに事務局に提出)がまだ決まっていない。附属書Ⅰ国の排出量は、2020年までに1990年比で25-40%削減することが求められる厳しい文言が入っているが、日・加・露は現状では削減義務を負わないことを示唆している。
次期枠組みに関しては、今回設立されたDurban Platformを通じてプロセスが立ち上がるが、”protocol, legal instrument, or agreed outcome with legal force”と形式は未定である。
他にもCOP議長が直接扱うほど熱意を見せていた緑の気候基金(GCF)も合意に至り、COP16で採択されたカンクン合意の実施のための一連の事項(適応委員会の内容や技術執行委員会の内容など)も決定された。
5.日本の姿勢とこれから
日本は「CP2が将来の包括的な枠組みの構築に資さない」として、CP2に削減目標を持たないことをCOP16と同様に強硬に貫いた。しかし、海外NGOの反応は異なっていた。例えば、化石賞という国際環境NGOが交渉に後ろ向きな国に与える不名誉な賞は、COP16では単独1位を2度受賞しているが、今回は8日に加・露と2位を1度受賞したのみである。各日報やニュースでも日本の露出は著しく低かった。
COP17の結果は、日本の主張に極めて則したものとなった。しかし、公開会合やメディアの情報では、交渉を先導していたのはEU,南ア,インドといったところであり、日本がどのような役割を果たしていたのか疑問である。水面下で何らかの調整をしているのではあろうが、「京都」を手放し、少なくとも表面的に交渉に積極的に介入しない日本の存在感が希薄化する危機性を著者は感じる。
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